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【修理解説】ゲームボーイアドバンスSP(GBASP)の液晶が経年劣化(ビネガーシンドローム)になって見づらいので分解して液晶を交換修理してみた

投稿日:2023年10月22日 更新日:

 先日、ゲームボーイアドバンスSP(GBASP)で遊ぼうと電源を入れたところ、液晶画面の異変に気が付いた。

 あれ?何だこの画面のゴミみたいなのは……まさか、アレか?

アレになったGBASPさん(20さい)

 そう、アレだ。
 今回においてのアレとは「阪神タイガースの優勝(おめでとう!)」ではなく、液晶パネルの経年劣化によって偏光板が劣化し、画面表示や色が薄くなったり上記の写真のようなゴミみたいな物体が画面に現れる状態のことだ。

 世間でこの症状は「ビネガーシンドローム」と呼ばれており、ビネガー(酢)という名の示す通り、経年劣化した液晶の偏光板は酢酸のような独特の臭気を放つことからそう呼ばれている。

 このゲームボーイアドバンスSPは2003年2月14日の発売間もなく購入したもので、すでに20年が経過しているため、各部パーツに経年劣化が起こる事は仕方無いことかもしれない。

 確かこのGBASPは20年選手というハイキャリアなマシンではあるが、これまでに電源スイッチの接触不良程度の不具合しか発生せず、この手のデバイスで特にダメになりがちなバッテリーや液晶が元気だったという堅牢さは、まさにTHE任天堂プロダクツといったところだ。

 現在、画面が見づらいだけで、動作自体は特に問題が無い状況だが、このまま見づらい液晶でのゲームプレイは精神衛生上よろしくない。

 そんなワケで、今回は悩める20年選手のゲームボーイアドバンスSPの液晶修理を安価に行うことができたので、その修理方法を紹介しよう。


修理方法は2種類ある!

 まず、液晶がこのような状態になってしまった場合、修理方法は主に2つある。

【GBASPの液晶修理方法】

その1.液晶の偏光フィルムを剥がして張り替える(低コスト、難易度高め)

その2.液晶パネルそのものを交換する(高コスト、難易度低め)

 1は、液晶をそのまま使いまわす方法で、パネルに貼られた偏光板フィルムを剥がして新品に交換するため、amazonなどで安価に偏光フィルムを購入すれば非常に低コストでの修理が可能だ。

 しかし、先人達の作業記録を見ると、どうも偏光板を剥がす作業がかなり手間がかかって厄介なようで、頑強なノリでフィルムが固定されているようだ。

 さらにフィルムを剥がしてからも液晶に残った糊の除去、偏光フィルムを貼る向きの調整、フィルムのカット作業など手間が相当かかるようなので、今回は1の方法はやめておこうと思った。

 というワケで、2の「液晶パネルそのものを交換する」という作戦で行こうと思う。

 さらに、液晶パネルを交換する手法は2つあり、「同じタイプの液晶に交換する」「高画質のIPS液晶に交換する」という方法がある。

 最近では古いゲーム機の液晶をバックライト付きのIPS液晶に交換する改造が、一部界隈で流行しているようで、ゲームボーイ(無印やGBAなど)の暗くボンヤリした液晶を、IPSに換装すると、色のメリハリが劇的に向上し、さらにバックライトで圧倒的に見やすくなる。

 IPS化された画面を見ると、劇的ビフォーアフターばりに「なんということでしょう!」と声に出てしまうほど画質が向上するという、まさに夢のリフォーム改造だ。

【液晶の比較】

(左から)ビネガー液晶(劣化)・ノーマル液晶・IPS液晶

 ただし、IPS液晶に交換するにあたっては、別途IPS用の改造キット(IPS液晶+基板)が必要となるため、お値段が高めなのがネックだ。

 今回はお値段控えめの現状復旧ということで、同じタイプの液晶「反射型フロントライト液晶」を良品に換装する方向で行こう!

 いやー、IPS液晶メッチャ綺麗なんだけどね……もうIPSは持ってるから今回はノーマルでいいや。

 そんなワケで、GBASP用液晶の中古品がヤフオクやメルカリを探すとけっこう安価で販売されているので、程度の良さそうなものを見つけて購入しよう。

 幸い、前述のようなIPS液晶交換の改造で取り外されたノーマル液晶が出品されていることが結構あるため、現在は比較的簡単に純正パーツを見つけることが可能だ。

 なお、中古液晶を探す際に間違えてビネガーシンドロームになった液晶を買わないように注意が必要だ。

 中古のビネガー液晶の大まかな見分け方は、「画面中央あたりが変色している」「画面に気泡みたいなものがある」やつは高確率でビネガーなので気を付けよう!

 今回、無事フリマサイトで状態の良いGBASP用の液晶が手に入ったので、さっそく手術開始!

必要な道具を揃える

 今回の修理は「液晶画面そのものを交換」なので、必要なアイテムは以下の通りだ。

・交換用液晶パネル(今回はフリマアプリから中古品を調達)

・Y型ドライバー(2.0)

・プラスドライバー(1.5)

・マグネットシート(取り外したネジの保管用)

 特にY型のドライバーは、任天堂製品を分解メンテナンスする際に重宝することから、メンテナンスに必要なドライバーが詰め合わせされたセットもあるため、道具を揃える作業はとっても楽だ。

 液晶パネルについては、amazonでもGBASP本体から取り外した純正液晶の中古も売っているので、フリマアプリでの購入に不安がある人は下記リンクの商品もご参考にどうぞ。

分解作業(本体側)

 まず、本体を裏返してネジを外す。

 先にプラスドライバーでバッテリーのフタのネジ(黄丸)を外し、バッテリーを取り外す。

 次に、Y字ドライバーに持ち替え、赤丸のネジ5本を外す。

 なお、中心部のYネジとプラスネジはネジ穴が浅く、適当な力で回すと穴が潰れる(なめる)可能性が高いため、なるべく強めにドライバーを押し当てながら回すこと!
(力加減の目安は、押し込み7、回し3くらい)

 ネジを取り外したあとは、ガワを持ち上げるだけで本体側のボディが開腹できる。
その際、電源スイッチが作業中にポロっと落ちるおそれがあるので、あらかじめ外しておこう。

あらかじめ取り外しておこう

 もし、現在GBASPの電源が入りにくかったり、電源ランプが赤と緑が交互につくなど電源が不安定な状態だったら、分解ついでに電源スイッチをメンテナンスしておこう

【参考記事】

【修理解説】ゲームボーイアドバンスSPの電源が入らないなど不安定なので、分解して電源スイッチをメンテナンス修理してみた【GBASP】

 次に、本体基板にネジが3本あるので、プラスドライバーで取りはずす(写真の赤マル)

 これでメイン基板と正面パーツが外れるので、基板を垂直に持ち上げる。
 (ボタンのパーツがバラバラ取れるおそれがあるので、ボタン側は下向きで!)

上のゴムパーツ(灰色)も取り外し中にポロリするので注意


 メイン基板の上側に液晶と繋がるフラットケーブルがあるので、取りはずす。
取り外しは、フラットケーブルの接続されたコネクタ両端に黒いストッパーが掛かっているので、左右両方とも矢印の位置に動かしてストッパーを解除する

 ストッパーが外れたら、ケーブルを軽く引っ張ってケーブルを抜き取る。

 ここで作業中にボタンのパーツやスピーカー、LEDの透明プラパーツがポロリしないように、あらかじめ外しておこう!(推奨)

 最後に液晶のフラットケーブル裏の残り1本のネジをプラスドライバーで外せば、ヒンジ(蝶番)のプラパーツが外れるので、本体側の作業は完了だ。
次は液晶側の作業だ。

分解作業(液晶側)

 まず、液晶部分を分解するにあたって、正面のネジ5か所を取り外す必要がある。

ゴムの裏に隠しネジがある!

 いずれのネジもゴムパーツで目隠しされているので、細めのヘラ(マイナスドライバーでも可)をゴムパーツの縁のなぞるようにして差し込んほじるように取り外す。

 しかし、ゴムパーツが経年で硬化していると、弾力が失われて切れたり割れやすくなっているが、そこは開き直って諦めよう(無事5個ともボロボロになりました!)。

ごらんの有様だよ(どんまい!)

 目隠しゴムが外れたら、5本のネジをY字ドライバーで取りはずす

 これで液晶が前面パネルごとポコッと外れるので、フラットケーブルを引っかけないようにスリットから抜き取れば液晶が外れる。

 液晶パーツは1つのユニットになっているので、これ以上の分解は必要なく、そのまま今回調達した液晶パネルに差し替えればOkだ。

フラットケーブルを抜く
液晶を取り外す
ビネガー液晶(左)、マジで酸っぱい臭いします!
ネジ締めして新しい液晶に換装!


戻し作業

 ここからは、分解した時と逆の手順で戻すだけだが、作業の注意点を箇条書きでまとめておく。


・LEDの透明プラパーツの取り付けを忘れがちなので要注意!(付け忘れました)

・液晶のフラットケーブルはヒンジ部分で一周クルンとカールしてからスリットを通して本体ガワに入れる

・本体ガワの基板を取り付ける前にボタンのプラパーツとゴムパーツを取り付けておく

・動作不具合に備えて、動作確認が完了まで最初に締めた本体ガワ裏のネジは締めない

ここまで出来たら、いよいよ動作確認を行ってみよう。

♪ピコーン!(いつもの音)

OK,ここまで動くのを確認できたら、本体裏のネジを閉め、液晶部分のネジの隠しゴムを付ければ作業完了だ。(ゴム、ボロボロになっちゃったけど……)

GBASPはゲームボーイの最終形態だ(一家に一台必須!)

 今回は、ビネガーシンドロームになってしまった液晶画面をパーツ交換修理で無事にGBASPを復活させることができた。

 20年選手のGBASPはメイン基板がなかなか頑丈なため、このように少し手を入れるだけでまだ十分に使う事が出来るので、同じような症状で困っている人は是非ともあなたの愛機を修理して復活させて頂ければと思う。

 以前、別の記事で「GBASPの液晶がそろそろ逝くかな?」とか言っていたら本当にダメになってしまったイヤなジンクスがあるので、これ以上故障の話は避けたいところだが、選手生活が長いだけに今後もどこかしら故障する可能性があるのは否定できない。

GBASPよ、永遠に!

 ゲームボーイアドバンスSPはゲームボーイシリーズの最終形態で、すべてのゲームボーイシリーズのソフト(GB、GBC、GBA)が遊べる汎用性の高さが魅力で、初期のGBゲームからアドバンス末期のソフトまで幅広く遊べる※だけでなく、フロントライトを搭載したTFT液晶のため、歴代ゲームボーイシリーズの中でも画面が見やすい最強のゲームボーイだ。(1989年~2006年に発売されたソフト)

 もし、これからゲームボーイのソフトに挑戦したいけど、どのハードを買おうか悩んでいる人がいたら、迷わず「ゲームボーイアドバンスSP一択だ。これだけあればどのソフトも動く!(ごく一部例外あり)」と全力でオススメしたいマシーンだ。

 つまり、GBASPさえあれば、スーパーマリオランド(1989年発売)からファイナルファンタジーVIアドバンス(2006年発売)まで遊べちまうんだ!

 逆に、初代GBやGBカラー、GBアドバンスは今となっては液晶画面が暗かったりショボかったりで画面がけっこう見づらいのであまりオススメできない

 そんなGBASPの魅力に気づいた人が増えているせいか、最近は中古で見かける機会が少なくなったりプレミア化している兆候があるため、もし現在ゲームボーイに興味があって遊んでみたいなと思っている人は、GBASPを見かけ次第ダッシュして奪取しよう!

 本体が折り畳み式というギミックも無駄に面白カッコイイぜ!

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