今回は厄介なブツが手に入った。
そう、ニンテンドー3DSシリーズで最も分解したくない機種ナンバー1(英二六調べ)のNewニンテンドー2DSLL(以下New2DSLL)だ。
この機種はネットで購入したジャンク品で、ジャンクの理由が「音量調節ができない」というシロモノだ。
最近なんだか3DSシリーズ全体の中古価格が高騰気味で、このNew2DSLLに至っては外装がぼろい中古品でも2万円超えと強気な価格で販売されている。
今回購入したNew2DSLLも例外に漏れず、故障したジャンク品なのに13000円位という強気の販売価格だ。
しかし、液晶画面が割れているなどの深刻なダメージは無く、壊れている箇所が音量ボリュームだけなので、「まあ、音量なら接点復活剤くらいで簡単に直るんじゃないの?」と軽い気持ちでポチッてしまった。
後日、問題のNew2DSLLが届いて本体を持ったところ、本体のキズも少なく状態良好で当たりじゃないかと思ったと同時にイヤな予感がした。
「なんか、本体を振るとカラカラ鳴るぞ……マラカスか?」
そして、問題の音量ボリュームを動かしてみると、スッカスカの感触でさらにイヤな予感が加速した。
音量ボリューム周りを見ると、ボリュームあたりのガワにヒビが入っている。
この状況から推測すると、これは”落として壊したやつ”だ。
単純な接触不良程度のラッキージャンクと油断していたが、これは物理的に部品が逝っているかもしれないやつだという可能性が浮上した。
さすがジャンク品というだけあって、一筋縄ではいかないようだ。
そして、分解して状態を見て2度目のビックリ。
ガッデム、メイン基板側のボリュームスイッチの突起が折れてやがる!
どうやらカラカラ鳴っていた原因は、折れたボリュームの先端パーツの破片の仕業だったようだ(破片は開腹した瞬間に落ちて行方不明)
この基板側の突起が折れると、外装のボリュームパーツ(青)と突起が噛み合わなくスカスカになってしまって、音量調節が出来なくなっているようだ。
この症状では、本来はメイン基板にハンダ付けされたパーツを外して新しいパーツに交換したいところだが、New2DSLLのボリュームの交換部品はamazonを探してみたところ売っていないようだ。
さて、部品が手に入らないなら、この部品を自体を修理する方法はないかと考えてみたところ、無謀な作戦を思いついた。
「UVレジンで、この折れた部分を盛りつけよう!」
今日は、そんな音量ボリュームのパーツが物理的に破損して機能しなくなってしまったNewニンテンドー2DSLLの無謀な修理に挑戦したお話だ。
目 次
■必要な道具を準備
Y字ドライバー
プラヘラ
UVレジン+UV-LEDライト
爪楊枝
■本体裏フタの爪を外す
まずはY字ドライバーで本体裏のネジ4本を外す。(写真赤マル)
このNew2DSLLは実にいやらしい作りで、ネジを外しただけでは簡単には外れない構造になっている。
ここはヘラを下画面の溝部分に差し込み、溝に添わせて動かして少しずつツメを外す必要がある。
外れた部分にはピックのヘラを差し込んでおいて再度ロックがかからないようにしておく。
ある程度ガワを浮かせたら、最後にイヤホンジャック付近に深めにヘラを入れて軽く捻るとツメが解除できる。
とにかくこのツメのかけ方が厄介で、最初はなかなか苦労すると思うが、ゆっくり丁寧に進めればガワが開くはずだ。
ただし、この裏フタのガワのプラスチックが任天堂製品にしては有りえないほど強度の弱い材質を採用しているせいか割れやすい問題がある。
今回のやつは明らかに落として割れた跡が見られるが、よく中古ショップで見かけるNew2DSLLも底面のプラスチックにヒビが入っている物をよく見かけることから、この機種の外装パーツは明らかに強度不足なのではないかと思われる。
■スピーカーケーブルを外す(2本)
ツメが外れても、まだ裏フタとメイン基板がケーブルで繋がれている箇所があるため、そのままでは裏フタが取り外せない。
スピーカーのL,Rと背面カメラのケーブルがメイン基板に繋がれているが、今回の作業では左右のスピーカーケーブルのみを外すだけで十分作業が出来そうなので、2本だけ取り外す。
スピーカーケーブルは根元を指先で摘まんで引き抜くだけで取り外しが可能だが、けっこうコネクタが固めなので少し力がいる。
スピーカーケーブルが抜けたら、LRボタン側を支点にして裏フタを開ける。
これで修理作業が可能な状態になった。
■ボリュームの突起部にレジンを盛る
ここから問題の病巣部だ。
今回故障した音量ボリュームのパーツは、本体が落下した際にボリューム側から地面にヒットしてその勢いでメイン基板に取り付けられたボリュームパーツの突起部分が折れて破損したと考えられる。
突起は無くなってしまったが、幸いボリュームパーツの根元部分は生きていたので、今回はその部分にUVレジンを盛りつけて突起部分を作ろうという工程だ。
まず、目視で突起のあった場所を探す。
ちょっと分かりにくいが、写真の矢印部分が突起のあった箇所だ。
ここを修理するためにUVレジンを使用する作戦だ。
まず、爪楊枝の先端にUVレジンを軽くチョンと乗せる。
次に、突起のあった箇所にレジンをチョンと乗せる。
レジンを乗せた箇所にUV-LEDライトを20秒ほど当てる。
上記と同じ工程を繰り返し、少しずつレジンを盛りつけて突起部分を高くしていく。
ここで注意するポイントは、1回の工程でレジンを多く付けすぎると必要のないところにレジンがかかってしまい、ボリュームのスライドが動かなくなってしまうので、焦らずに少しずつ乗せて固めていく。
2~3回ほどレジンを盛ったあたりで、一旦ボリュームのスライドパーツ(青)を取り付けてみて、凹部分と突起凸が噛み合ってちゃんとスライド出来るかチェックしてみる。
スライドが全然動かない時は、金属パーツにレジンが固着している可能性があるので、デザインナイフなどの工具で固着している部分を切り落とすなどして調整する。
とりあえず動くようになったので、これで突起部分の補修は完了だ。
■戻し作業
ここからは戻し作業となるが、ちょっとコツがあるので紹介しよう。
まず、スピーカーケーブル2本の取付だが、このケーブルは差し込みの向きが決まっているので、コネクタの形状をよく見てから差し込む。
(凸みたいな形状をしている)
次に、裏フタを閉める作業だが、予め音量ボリュームを基板側とスライドパーツ側を突起に嵌めておく。
裏フタを閉める際はボリューム側から先に閉めて、しっかりボリュームパーツが噛み合っているのを確認してから残りの部分を押し込んで閉める。
特にボリュームパーツの噛み合わせが厄介なポイントで、ここが上手く噛み合っていないとボリューム調整できないだけでなく、噛み合っていない状態で無理やり閉めようとすると最悪のケースで突起部分が破損する。
ボリューム部分のガワがパチンと閉まったら、他の部分もあわせて押し込んではめ込む。
最後にYネジ4本を締めて作業完了だ、
■動作チェック
今回取り外したパーツで不具合が起きやすいポイントは、スピーカーから音が出なかったり音量調整ができないあたりだろう。
音が出ないは、おそらくスピーカーケーブルの差し込みが甘いのが原因なので一旦スピーカーケーブルのコネクタ差しこみ部分がきちんと入っているかチェックしてみよう。
音量調整が出来ない時は、取り付け時にボリュームパーツの噛み合わせがズレて失敗しているのが原因と考えられる。
ちゃんとパーツ同士を噛ませて作業していても、取り付ける際のちょっとした事で部品がズレることもあるため、ここも一旦裏フタを外して確かめてみよう。
とりあえず1週間ほど使用してみた限りでは、施工した箇所のレジンが破損する事態には至っていないが、果たしてどこまで持つのか正直不安なところだ。
ひょっとしたらアリエクスプレスあたりを探せば、交換用パーツが見つかるのかもしれないが、当面は騙し騙しこの状態で使ってみようかと思っている。
■最後に
今回、New2DSLLを分解修理して、この機種はいろいろな意味で苦手だなと思った。
ニンテンドー3DSシリーズの最後に登場したこのNew2DSLLは、これまでの技術をコンパクトにまとめ、さらに部品点数や立体視機能を省くことで、安価で薄型軽量かつ大画面で快適なゲームが楽しめる一つの到達点に至った機種であるとも言える。
しかし、軽量化とコストカットに舵を切ったコンセプトの影響か、プラスチック部品の強度の足りさが目に余り、さらに経年劣化しやすいバッテリーの交換ですら分解して裏フタを外さないといけないメンテナンス性の悪さがどうも好きになれない。
従来のゲームボーイなどの任天堂携帯ゲーム機は、子供が乱暴に使っても壊れにくい事を想定して作られているため、頑丈かつメンテナンスしやすい作りだったが、New2DSLLはそれとは真逆に壊れやすくメンテナンス性が良くない。
さらに、これまでの3DSシリーズでは、精密機器ゆえにメンテナンスの難易度は高くなってしまったが、消耗品である電池に関しては直近のNew3DSLLまでは比較的簡単に交換できるように設計されていた。
しかし、電池交換すら面倒になってしまったNew2DSLLはどうしたものか。
なぜこんなに不親切な設計にしてしまったのだろうか?
それほど機械に詳しくないユーザーにとっては、New2DSLLの電池がダメになってしまったら、そのままマシン寿命の使い捨てとなってしまうのは、これまで任天堂製品を使っていて感じた「ゲーム機を長く使って楽しんでね」のコンセプトに反しているのではないかと思われる。
現行機のSwitchでもNew2DSLLのイヤな流れを引き継いでおり、ユーザー側で簡単に電池交換が出来ないようになっているのは何とも納得のいかない話だ。
(ジョイコンの壊れやすさも考えものだが、取り外して交換出来るのでギリOK)
さらにSwitchはNew2DSLLよりもさらに厄介になっており、裏フタやシールドやカードスロットまで外さないとバッテリーまでたどり着けないという手厳しい構造となっているため、電池交換は任天堂のサポートセンターに修理依頼に出さないといけない流れとなっている。
なお、New2DSLLは2024年12月現在では任天堂公式の修理サポートを受けることができるため、安全に修理したい人や腕に自信の無い人は是非とも任天堂に修理依頼を受ける事をオススメする。
しかし、「部品在庫がなくなり次第サポート終了です」の文言が書き添えてあるため、おそらく近いうちにサポート終了するのではないかと思われる。
そんなわけで、任天堂にNew2DSLLを修理に出すことを考えている人はお早めに!