とうとうこの日が来てしまった。
ゲームボーイアドバンスの液晶画面に謎のツブツブや気泡のような浮きが発生して、ゲーム画面が非常に見づらくなってしまったのだ。
いわゆるビネガーシンドロームと呼ばれるアレだ。
ビネガーシンドロームとは、液晶パネルを構成する偏光板というパーツの経年劣化によって起こる現象で、上記のような症状で画面が見えづらくなる厄介なやつだ。
このGBAはビネガーシンドロームでも初期症状で、画面が見づらい程度にとどまっているが、症状が酷い物になると、劣化が広範囲に及んでしまい画面がまったく見えなくなってしまうほどだ。
そして、劣化した偏光板から独特の酸っぱい臭いが発せられる状況から、ビネガー(酢)に例えられてビネガーシンドロームと呼ばれているようだ。
以前、GBアドバンスSPの液晶も似たような症状となってしまい、その際は液晶画面を丸ごと交換する修理を行ったが、今回はかねてより挑戦してみようと思っていた方法で液晶画面修理を行ってみた。
(GBASPのビネガーシンドローム修理については過去記事参照)
参考記事:
その方法とは、「偏光板を剥がして、新品の偏光板に貼り替える」という作業だ。
過去に挑戦した人たちのブログや動画を見ると、古い偏光板を剥がす作業が厄介な事や、相当な悪臭がするとの事で躊躇していた。
そして、何とか貼り替え作業が出来たので今回はビネガーシンドロームになってしまったゲームボーイアドバンスの修理方法を解説しよう。
なお、先人のぼやき「偏光板の剥がしが面倒」「臭い」については、まったくもって仰る通りだったので、覚悟して挑むべし!
目 次
■必要な道具を揃える
・偏光板(カラー液晶用)
・デザインナイフ(偏光板はがし用)
・無水エタノール
・キムワイプ
・定規(金属製がオススメ)
・ドライバー(Y字,精密+)
・ピンセット
・プラヘラ
・プラスチックカード(ポイントカードやプリペイドカードなどでOK)
プラスチックタイプのamazonギフトカードがオススメ(紙のは強度不足)
今回の修理作業で一番重要なパーツのカラー液晶用の偏光板についてだが、白黒用とカラー用ではそれぞれ異なるため、間違えて購入しないように気を付けよう!
■本体の分解
まずはゲームボーイアドバンス本体を分解して液晶パネルを摘出する必要があるので、本体の分解方法を紹介しよう。
・本体裏のネジ外し(Yネジx6、プラスx1)
まず、本体を裏返してYネジ6本を取り外す(写真:赤マル)
つぎに電池フタの裏を外し、プラスネジ1本を外す(写真:青マル)
これで本体ガワが取り外せる。
・各パーツ取り外し
まず、液晶とメイン基板を繋ぐケーブルのストッパーを外す。
液晶のフレキケーブルはストッパーでロックされて引き抜けない構造となっており、基板側のコネクタについたストッパー(黒いパーツ)を左右いずれもピンセットで上にずらすだけでロックが解除される。
まだこの時点ではロック解除だけにしておき、ケーブルは外さずに次の工程へ。
・L/Rのボタン、本体左右のパーツ、電源スイッチを外す
このパーツは特にロックなどされていないので、簡単に外れるパーツだ。
特に電源は小さいパーツで失くしやすいので、失くさないように保管しておこう。
・プラスネジ3本を外す。
メイン基板は3本のプラスネジで留められている箇所があるので、写真赤マルの部分を取りはずす。
これでメイン基板の固定がフリーになるので、基板をちょっと持ち上げて下側にずらせば液晶のケーブルが抜ける。
もしケーブルが抜けない時はロックが上手く外れていないので、コネクタ左右のロックをしっかり上にスライドしているかチェックする。
これでメイン基板と前面フレーム(+液晶パネル)にパーツが分かれる。ボタンのプラパーツ+ゴムは特に固定されていないため、バラけないように要注意だ。
・液晶取り外し
液晶は本体前面パーツに粘着テープのようなもので取り付けられているだけなので、ネジを外す作業は無いが、けっこう強力な粘着で簡単には取れないようになっている。
液晶パネルを取り外すコツは、本体前面フレームの左右を持ち、雑巾絞りのようなアクションでフレームを何回か捻ると、ミシミシ鳴りながら接着が剥がれ、液晶パネルが外れやすくなる。
捻っただけで液晶が外れない時は、フレームを捻ってちょっと液晶が浮いてきたタイミングでプラヘラなどの柔らかい素材の材質を差し込んで液晶パネルを持ち上げれば外れる。
(金属ヘラやドライバーなどの固い物でやると液晶パネルが破損するおそれがあるのでダメ!)
これで液晶パネルの摘出完了だ。
そして、ビネガーシンドロームの名に恥じない酸っぱい香りがして、こいつはなかなか……ん?
このビネガー臭は一般的には悪臭と言われがちだが、自分で白黒写真を現像した経験のある人にとっては停止液の酢酸風味な香りで、ちょっとフフッとなってしまったりもする。(英二六は後者でした)
■偏光板を剥がす(今回1番の厄介ポイント)
液晶パネルの偏光板は、液晶パネルの最前面に貼られている。
偏光板は粘着材のようなもので貼られているが、これがなかなか強力な粘着力で取り外しに苦労するため、これを剥がすのが今回一番面倒なポイントだ。
まず、液晶の角にカッターの先端を当て、剥がすポイントを浮かせる作業から始まる。今回はデザインナイフで作業を行ったが、カッターナイフでもおそらく使えるはず。
上手く角を浮かせることが出来たら、そこからベリベリと剥がすのだが、最初の時点でなるべく広い範囲を浮かせてから剥がし始めないと途中で偏光板が破れてしまい、さらに剥がし作業に苦戦することが予想されるので、事前の浮かし作業はなるべく広く準備しておこう。
そして、黒っぽいシートが剥がれて偏光板が取れたと思っても油断してはいけない。
実はこの偏光板は2層構造となっており、黒っぽい層と透明層があるため、剥がれたと思ったら下の透明シートの層が残っているという巧妙なトラップが仕掛けられているのだ。
ちなみに、最初にカッターを当てる時点で上手く2層分浮かせる事ができけば、一気に下の層まで剥がす事ができるが、今回は見事に失敗して上の一層しか剥がせておらず、2度手間となってしまった。
最初、2層目の透明フィルムの存在に気づかずに作業を進めてしまい、偏光板を交換しても全然画面が映らなくて焦ったものだ。
偏光板を2層全部剥がせたら、次は液晶パネルに付いた粘着剤を剥がす作業を行う。
キムワイプのようなケバ立ちにくい頑丈な紙に無水エタノールを付けて、ひたすら液晶をゴシゴシとこすって糊を剥がす作業となるが、この粘着がまたしつこいの何のって……。
キムワイプで大まかなところが取れたら、細かいところは綿棒に無水エタノールを付けてゴシゴシして取ろう。
残った接着剤をちゃんと取れたら、偏光板外しの作業は完了だ。
ここで横着して接着剤が残ったまま作業すると、新しい偏光板を貼り付けた際に古い粘着剤が気泡となってしまうので、ここは念入りに取り除く必要がある。
ここまで出来たら、一旦休憩することをオススメしたいところだ。
慣れていないせいか、ここまででも結構ハードだった……。
■偏光板貼り付け
まずは取り外した偏光板のサイズにあわせて、新しい偏光板をカットする。
偏光板は材質がけっこう固く、カットの際は力を入れる必要があるためプラスチック定規よりも金属定規を当ててカッターで切りだす方法がオススメだ。
次に貼り付け作業に入るのだが、ここで気を付けるポイントは「新しい偏光板は両面に保護テープがある」事と「偏光板には表裏の向きがある」の2点だ。
保護シートを剥がし忘れたり、取付の表裏を間違えると液晶の画面が映らないので、そこは間違えないように細心の注意を払って作業しよう!
表裏の確認にあたっては、先ほど分解したGBA本体を一旦仮組みして電源ONの状態にして、偏光板の保護シート両面を少しだけ剥がした状態で液晶に当ててみて、画面が正しく表示される向きが正しい向きだ。
なお、保護シートを剥がして粘着面がある方が液晶貼り付け側と判別できるが、確認のために粘着面をベタベタ触ると、ホコリなどの汚れが付着してしまい、気泡となって貼りが汚くなるので触らない方がいい。
画面が異常に暗いときは、古い偏光板の2層目が残っている可能性があるので、剥がし忘れていないか再チェックしよう。
今回の作業では起動画面の「GAMEBOY」で確認しているが、色味の確認がしたいときは、カラー表示されるゲームソフトも入れておくと色確認がしやすくなるので、ソフトも入れて起動した方がいいかも?
偏光板の表裏の確認が取れたら、ようやく貼り付け作業だ。
ここはスマホの液晶保護フィルタの貼り付けと同じ要領となる。
ホコリが入りにくい環境として、お風呂場の床をシャワーで濡らしておいて湿度のある状態にしての作業が良いが、GBAの液晶は電気接点剥き出しの精密機械のため、濡れたり結露しないよう注意が必要だ。
次に、偏光板の粘着面の保護シートを剥がし、端からジワジワ貼っていく。
なお、まだ表面の保護シートは剥がさず残しておくこと。
液晶に入った気泡を端に追いやるために固いプラスチックカードやプラヘラなどで気泡をゴリゴリと押し出す作業となるが、保護シートを残しておかないと画面がキズだらけになってしまうので、間違えて保護フィルムを剥がさないように注意が必要だ。
この偏光板はスマホの液晶保護シートのように気泡がスーッと抜けるような軽やかさは無いようで、やたら気泡が入りやすい。
ゴミが入っていない状態にも関わらず気泡がやたらしつこく残るので、根気強く気泡を押し出しながら作業しよう。
偏光板の貼り付けと気泡の除去が終わったら、偏光板一番上の保護シートを剥がして完了だ。
あとは逆の手順で本体を組み戻す流れとなるが、動作確認が完了するまではメイン基板のネジ締め程度で済ませておき、本体裏のネジ締め作業は行わないほうが良い。上手く動くことを確認してからネジを締めよう。
■動作確認
電池を入れて、ゲームソフトを入れてスイッチON!
おー、これまで中央部がどんよりして汚い表示だったGBAがスッキリした本来の画面になった!
液晶画面の色味については、何となく純正と比べると違うような気がしないでもないが、社外品パーツなので多少の違いは仕方ない。
ひょっとしたら、偏光板の製造メーカーによっては純正に近い色味を再現しているものがあるのかもしれないが、そこは現時点では確認できないところだ。
何はともあれ、液晶が見やすく復活できたのでヨシッ!
■(最後に)作業は面倒だけど、やってみる価値はありますぜ!
このようにゲームボーイアドバンスの液晶は経年で液晶の偏光板が劣化する症状が発生するが、社外品パーツの偏光板に交換することで復活させる事ができる。
既に任天堂のGBA修理サポートは打ち切られているので、修理は自力で行う必要があり自己責任となってしまうが、使えなくなってしまったままに腐らせておくには実に勿体ない話だ。
ゲームボーイアドバンスパーフェクトカタログによると、GBAソフトは国内だけでも全791タイトル、海外1045タイトルと実に多くのソフトがリリースされている。
実際どんなソフトがあるのかは、カタログを読んでチェックしてみよう。
さらに旧モデルのゲームボーイ(GB)やゲームボーイカラー(GBC)用のソフトとも互換性があるので、さらに多くのタイトルを遊ぶことができるという優秀なゲームマシーンだ。
幸いな事に、現在でもブックオフなどの中古ショップを探すと、GBAソフトの購入が可能で、過去にさんざん遊びこんだタイトルを再プレイしたり、まだ見たことのないマイナーソフトを遊んでみたりと今でも十分楽しむことができるはずだ。
しかし、2001年の発売から既に20年以上が経過しているハードのため、本体に関しては今回のようなビネガーシンドローム液晶で見えづらくなっている個体も増えてきているのも現状だ。
そのような状況になっても、偏光板を交換することでGBA復活させることが可能なので、これからも末永く楽しんでいただきたい。これまでいくつかGBAを触ってきたが、メイン基板まで死んでいるものは案外少なかったことから考えて、任天堂製品はとにかく頑丈に作られている。
偏光板交換作業には根気強さと臭いへの耐性が求められるが、そこは努力と根性で頑張って欲しい。
ちなみに、個人的オススメのGBAソフトは、GBA後期頃に発売された「F-ZERO CLIMAX」だ。
初代F-ZEROのフィーリング作品では最終進化形態となっており、ボリュームも難易度も満足のいく非常に良く出来た作品だ。(F-ZERO64とF-ZERO GXは3D寄りになって別フィーリング)
しかし、これだけ名作にもかかわらず、なぜか他機種への移植がほとんど無く、WiiUのバーチャルコンソールでリリースされた程度に留まっているという不遇の名作だ。(現在WiiUはDL販売停止)
そういった希少性の影響か、現在中古ソフト市場でも結構なお値段なのがネックだが、F-ZERO好きなら買っておいて間違いない出来なので、ガチでオススメだ!
↑ あらためて見ると、パッケージ絵のキャプテンファルコン一同の顔が、妙に悪役顔っぽくてチビッ子のハートを掴めなかったのがマズかったのか?
ちなみに、少しお手頃価格の「F-ZERO ファルコン伝説」も初代F-ZEROフィーリングで遊びやすさに定評のある作品だ。各キャラごとにシナリオ形式でゲームが進む流れはちょっと珍しいタイプだが、話が進んでいくうちに各キャラ同士で話が絡んでくるあたりが結構いい感じだ。
ファルコン伝説は絵柄がこれまでのアメコミ調からアニメ調になっているが、ゲームのF-ZEROらしさは変わらずなので安心だ。
こっちのキャプテンファルコンは悪役顔じゃないし!
ちなみに、ニンテンドーDS(or DSLite)はGBAスロットを搭載しているのでGBAソフトが動く。
さらにDS Lite本体は中古本体がお手頃な価格で購入できるので、わざわざ苦労してGBAを修理する必要があるのかと問われると、正直なところ微妙なところかもしれないが……考えるな、感じろ!
ほら、DSではGBとGBCは動かないし!