昔からよく通っていた牛丼屋の吉野家が、黒い看板の吉野家にリニューアルされた。
リニューアル工事に結構な時間をかけたていた上に、店内の間取りも大幅に変更された新しい店舗という事に期待して行ってみたものの、結果は非常に残念な吉野家に改悪されていたという印象だ。
しかし、これまで旧来のオレンジ看板から黒い看板にまでかけかえておいてコレでは……。
しかし、これまでの吉野家で感じていた不満を解消しているメリットもいくつか見られたが、それを上回るデメリット部分が多く、良いところをスポイルしてしまい総合的にはマイナス評価の黒い吉野家という結論に至った。
今回は「体は吉野家で出来ている」を自称する吉野家ラバーの英二六が黒看板の吉野家に行ってきたレポートをお送りします。
目 次
■黒い吉野家のメリット
・タッチパネルで注文しやすくなった
各席にタッチパネル端末が設置され、注文がしやすくなった点は嬉しいポイントだ。
従来の吉野家では、注文したいメニューが決まって店員を呼んでも、タイミングが悪いとなかなか手が空かなくて注文を取りに来てくれない事もあったため、これは嬉しい改良だなと思った。
メニュー画面も見やすく、カテゴリー分けも分かりやすい上に動作もキビキビで操作しやすい端末だった。
あの同業の松屋が設置した悪名高い難解操作クソタッチパネル機とは雲泥の差だ。
さすが牛丼の王者・吉野家といったところだ。
・会計はレジに行くだけで即対応
現行の吉野家でもレジに会計伝票を持っていくだけでOKなのだが、これも店員の手の空き具合によってはレジ対応に取り掛かるまでの時間に変動があり、なかなかレジに入ってもらえずレジ前で長時間待つことが多かった。
しかし、黒吉野家ではレジに人がちゃんといたので、すぐに清算対応してもらう事ができた。
持ち帰り客と同じレジを使うためバッティングすることもあるが、既存の吉野家で味わった延々と店員が来るのを待つもどかしさに比べれば大した問題ではない。
・電源完備でスマホ充電OK
各席にUSBポートと100V電源プラグが備え付けられている。
最近はカフェなどスマホ充電できるお店も増えてきているが、牛丼屋チェーンで電源が使える店は初なのではないだろうか?
食事中にスマホを充電しておけるのは便利だなとは思ったが、基本的にサッと食べてパッと出る滞在時間の短い吉野家ではあまり充電の恩恵は少ないかもしれない。
さらに、充電待ちで長居されてしまい、店舗の回転率が落ちるという問題に繋がるという可能性も……?
■黒い吉野家のデメリット
ここまで吉野家を褒めている内容を書き綴られている記事を読んでいる賢明な方は、「もしかして、この記事はタイトルで吉野家をディスるように見せかけて釣っておいて、実は吉野家ヨイショの提灯記事なのでは?」と疑ってしまうかもしれない。
しかし、ご安心あれ。ここからは黒い吉野家がいかにダメであるかを忖度なく書き綴るので、覚悟の上で読み進めて頂きたい。
・セルフサービス(客への負担)が増えた
とにかくこの黒吉野家は店舗側の省力化に力をいれるスタイルで、これまでの吉野家と違ってセルフサービスを是とするスタイルだ。
席に置かれたこの利用案内を見て頂ければわかるように、「食事を取りに行く」、「食器を片づける」行為は客任せとなっているのだ。
このセルフサービス方式により、従来に比べて客への負担は増える事となるが、そのぶん吉野家側の手間は減り、人件費を抑えることが出来るという仕組みだ。
このコストカットにより、商品の値上げを抑えて顧客に還元して頂ければと願いたいところだ。
逆にここまで犠牲を払っておきながら、飄々と値上げを始められたら実に腹立たしい話となるだろう。
・注文履歴がわからないタブレット
今回、黒吉野家は初めてでタッチパネル操作に慣れていないため、注文の確定は出来た筈だがちゃんとオーダーが通っているか不安になる時がある。
念のため注文履歴を確認しようと思ったら……何と注文履歴が見れない!
注文履歴の閲覧機能は、回転寿司のタッチパネル注文ですら何年も前から実装されていた機能なのに、なぜ当たり前の機能がこいつには無いのだろうか?
それとも、画面のどこかに注文履歴へアクセスできるボタンがあるのだろうか……?
・注文した料理の出来上がりタイミングが分かりにくい
各席には席番号が振られており、注文した料理が出来上がると店内の大型モニターに音声案内とともに席番号が表示される仕組みになっている。
これまでの吉野家は、店員が出来上がった料理を席まで持ってきてくれるスタイルだったが、前述の通り黒吉野家では出来上がった料理を入口付近の渡し口まで取りに行くというセルフサービスとなっている。
しかし、これがまた出来の悪いシステムで、まず音声案内の声がけっこう聞き取りにくい。
しかも、各席に設置されたタブレットには、料理が出来上がった旨が表示されない無能ぶりだ。
自分の席のタブレットに料理が出来上がった案内が出る仕組みは、回転寿司でもガストでも昔から当たり前に搭載されていた機能だが、この最新システム(?)の吉野家ではタブレットに何も表示されないという役立たずっぷりだ。
ましてや回転寿司のような店は、席まで届けてくれる仕組みなので案内そのものは目安程度でいいのだが、吉野家はそのタイミングで受け取り口まで料理を取りに行かないといけない重要な役目があるにもかかわらず、その案内が分かりにくいのは致命的だ。
実際に、慣れていない人や年配層の方が出来上がりの案内表示を見逃してしまい、痺れを切らした店員がわざわざ席まで食事を持っていき「呼ばれていましたよ!」と余計な一言をかけてくれるというストロングスタイルを貫いていた光景を目の当たりにした。
このような問題が起こる事は容易に想像できるはずなのだが、それが欠落している状況から考えると、タブレットのシステム開発を請け負った企業の連中(あるいは吉野家)が相当バカなのではないかと疑いたくなるレベルだ。
・テーブルに何も無い
本来テーブル上に置かれていた箸も水も紅ショウガも、この黒吉野家には置かれていない。唯一あるのは紙ナプキンだけだ。
つまり何も席に置かれていないので、全て入口付近のセルフコーナーから持ってこないといけないという仕組みなのだ。
そのため、渡し口で食事を受け取ったタイミングにあわせてセルフコーナーから一通り取ってトレイに乗せて着席するという流れが定石ルートとなるだろう。
しかし、水は着席してから待っている間に喉を潤したいので、必然的に水を汲みに一回はセルフコーナーに行く事となる。
さらに、食事中に爪楊枝が欲しくなったり、水のおかわりが欲しくなったり、紅ショウガが不足したりするため、その都度いちいちセルフコーナーまで取りに行かないといけない煩わしさがある。
これは本当に不便で、せめて水のピッチャーくらいは席に常備しておいて欲しいものだ。
・動線が悪く、店内で渋滞しがち
これまでの不満点から見ても分かるように、とにかく黒吉野家はセルフサービスという省力化の理念の犠牲として、客が何度も店内を歩いて移動せざるを得ない状況が多発する。
そして、この移動する先はいずれも「返却口付近」に集中しているという問題がある。
まずは、うろ覚えで書いたヘッタクソな間取りの図を見て頂きたい。
渡し口、返却口、セルフコーナー(2か所)、レジ、持ち帰り注文機、これらがすべて返却口付近に配置されているため、動線がメチャクチャとなり返却口付近が狭い分ボトルネックとなり、混雑しがちだ。
実際、渡し口へ料理を取りに行こうとした際も、会計待ちの人や返却口へ行く人、セルフコーナー利用者と鉢合わせとなり、スムーズに通り抜けるのが難しかった。
今回の食事で、返却口付近を何回通ったかを思い出すと、自分1人だけでも6回通った事を考えると、そりゃ渋滞して作業動線がダメだなと思った程だ。
【返却口付近を通った内訳】
1.入店→着席
2.水を取りに行く
3.渡し口まで食事を取りに行く
4.つまようじを取りに行く
5.返却口へ持っていく
6.会計→退出
この店舗だけがたまたまダメな動線設計なら傷は浅いのだが、すべての黒吉野家がこの作りでは目もあてられない話だ。
これなら、まだ旧来のオレンジ吉野家に行ったほうが精神衛生上よろしいのではないかと思える程だ。
■(まとめ)良いところもあるが、悪いところは早急の改善を求む
このようにリニューアル後の黒吉野家は、従来の吉野家で感じていた不満点を解消した部分もいくつか見られて好感が持てる部分もあったが、圧倒的にダメな部分が目立ち、現状では「これならリニューアルしない方がマシ」と思えてしまうほどの残念吉野家だった。
しかし、この残念な問題については細かい改善レベルのアップデートで殆ど問題解決できそうなものが多く、この部分が直れば期待していた「リニューアルして良かった!」と思えるシン・吉野家になれるのではないかと思う。
例えば、先ほどボロクソに言った席に置かれたタブレットについては、「注文履歴の閲覧機能」「料理出来上がりの表示機能」を実装するだけで解決するはずだ。
これらはソフトウェアのアップデートだけで解決できそうな問題ではないだろうか?
あと、旧来通りつまようじや水などは席に置いておけば、セルフコーナーに行く回数が減り客側の動線も短くなるし、もし店員がテーブルの備品補充の巡回作業の手間を省くなら、客がタブレットから補充を要請する機能を実装すれば、店員も無駄な作業が削減できるはずだ。
これらはすべて素人考えによるものだが、逆に素人考えでここまで思いつくのだから、天下の吉野家が本気を出してカイゼンに取り組めば、省力化と顧客満足を最大限に得ることが出来るのではないかと信じている。
大好きな吉野家がいつまでも大好きな吉野家でいてほしいと思う英二六としては、そのあたりを頑張って欲しいと願わずにはいられない。
人手不足という課題に対して省力化も重要な要素だとは思うが、省いてはいけないものもあるのではないかと考えさせられる一枚のカットで今回の記事を締めさせていただく。
大好きな吉野家が嫌いになってしまう前に、早く何とか解決してください……。