数か月前にジャンクで購入したNewニンテンドー2DSLL(以下new2DSLL)だが、ジャンク理由が「スライドパッドが勝手に動く」と「カメラ不良」という物だった。
最近は3DSシリーズの中古相場は強気の価格帯で売られている物が多く、こんなに訳ありまくり状態でさらに外装がボロっちいジャンク品なのに15000円と、なかなかの価格だった。
しかし動作に不具合が無くて外装状態良好な本体は軽く2万円以上するため、この価格でもまあ安いと言えば安い部類なのかもしれない。
動作確認してみたところ、確かにスライドパッドがときどき勝手に動く症状があり、キャラクターの挙動が不審で、さらにカメラを起動するとエラーが出てハングするようだが、カメラさえ起動させなければゲームはプレイできるし液晶画面にも不具合は無いようだ。


そんなジャンク品扱いのNew2DSLLだが、過去にスライドパッド交換は別の3DSシリーズで何度か経験してきたし、New2DSLLも別件で一度分解した経験があるため、おそらく修理できるのではないだろうか。
さらにカメラを起動さえしなければエラーが出ないので「まあ、カメラが気になるようなら任天堂の有償修理サポートに出してまとめて修理してもらうかー」と舐めて数か月ほど放置していた。
そして2025年9月6日に「やっぱり任天堂に修理出そうかなー?」と任天堂の修理受付ページを見たところ……!

修理に必要な部品の在庫がなくなりましたので、Newニンテンドー2DS LL本体の修理受付を終了いたしました。(2025年9月4日更新)
ガッデム!
2日前にサポート終了してるやんけ!!
この絶妙なタイミングでサ終を引き当ててしまう自分の愚鈍さを呪うと同時に、結局このイカれたNew2DSLLを自力で修理せざるを得なくなったという事が確定してしまった。
カメラについては、おそらくパーツ交換すれば何とかなりそうな感じだが、あいにく交換部品の入手の目途が立たないため、この際カメラの不具合は放置してスライドパッド基板だけ交換すれば普通にゲームは遊べるようになるはずなので、new2DSLLを修理してみることにした。
スライドパッドのゴム素材も経年劣化で若干ベタついていたので、ついでに交換しておこう。
過去にも「New2DSLLって分解するの面倒でイヤなんだよなあ……」と幾度となくぼやいていたが、公式が修理サポート終了となってしまった以上、自助努力で何とかするしかない。
しかし、コツさえ分かれば案外簡単にスライドパッドは交換できたので、是非とも参考にして頂ければ幸いだ。
それでは、手術開始デース!
目 次
■必要な道具を準備
- New3DSシリーズ用スライドパッド+基板
- Y字ドライバー
- 精密ドライバー
- プラヘラ
- ピンセット
- 精密綿棒
ここで「New2DSLLなのにNew3DS用のスライドパッド?」と疑問を抱かれる方もいると思われるが、これで大丈夫だ。
3DSシリーズのスライドパッド基板は2種類あり、旧3DSとNew3DSのシリーズ用で分けられる。
New2DSLLはNew3DSシリーズの扱いとなるため、New用が使用できる。
逆に旧3DS用のを買ってしまうと使えないため要注意だ。
■裏フタの取り外し
作業開始する前に、本体の電源をOFFにしてタッチペン、SDカード、ゲームソフトを取り外しておく。
まずは、本体裏のYネジ4本を取り外す(写真赤マル)。

これまでの3DSシリーズに比べると圧倒的にネジの本数が少ないのが嬉しいところだが、なぜかYネジという特殊ドライバー必須というのが地味にいやらしいところだ。
まあ、任天堂ハードは子供が気軽に分解して壊してしまうのを防ぐために特殊ネジを使うのはある意味では理にかなっている。
ネジが外れても、裏フタは爪でガッチリとフレームに繋がれているので、次に爪を外す作業を行う。
まずは十字キー側とABXYボタン側からギターピック状のプラヘラを隙間に入れ、溝を添わせるようにプラヘラを走らせると爪がパキパキ鳴りながら外れる。

爪が外れない箇所は少しピックを捻ると外れやすいが、あまり捻りすぎると裏フタのプラスチックが割れるおそれがあるので力加減には要注意だ。
(音量ボリューム付近はパーツが特に脆いので、割れやすい)
ボタンのある左右側のツメをある程度外してたら、最後にイヤホンジャック側の面を外すやり方が作業しやすかった。

十字キー側、ABXY側、イヤホンジャック側の三辺が外れたら、少しだけイヤホンジャック側から少しだけ裏フタを持ち上げる。

まず、音量のボリュームスライダーを外しておく。
これは簡単に取れるというか裏フタを開けた瞬間落ちてくるので、紛失しないように要注意だ。

まだ裏フタと本体フレーム間に3本のケーブルで接続されている箇所があるので、全開にしてはいけない!
まず、スピーカーケーブルを外す。(L/Rの2か所)
スピーカーケーブルのコネクタは細かいため、目視でコネクタ部分をよく確認してコネクタ根元部分を持って垂直に引き抜けば外れる。
ラッチのようなロックは無いが、取付はけっこう固いのでちょっと苦戦する。

次に、背面カメラのフレキケーブルを取り外す。
ケーブルはメイン基板側の白いプラスチックパーツ(ラッチ)で固定されているので、ピンセットでラッチを上げてケーブルのロックを解除してからケーブルを引き抜く。
ロック解除した状態では全く抵抗無しでケーブルが抜けるので、もしラッチを上げた筈なのにケーブルが抜けない時は、無理にケーブルを引っ張らずにラッチの状態を再確認すること。
(無理やりケーブルを抜くとケーブルが破損する)




計3本のケーブルを外れたら、ようやくNew2DSLLの裏フタが外れる。

■スライドパッド基板の交換
見たところ、スライドパッド基板の交換作業は、3DSシリーズでほぼ共通の作業工程のようだ。
ここからは便宜上、スライドパッドのゴム部分を「スライドパッド」と呼び、下の機械パーツを「スライドパッド基板」と呼称する。

まず、スライドパッド基板を固定するネジ2本を精密プラスドライバーで外す。

ネジが外れたら、スライドパッド基板を軽く持ち上げてスライドパッドと基板を分離する。

次に、フレキケーブルを外す。
これもメイン基板側にケーブルを固定するラッチが付いているので、ピンセット先端で持ち上げてからロックを解除してケーブルを引き抜く。



これで古いスライドパッドが外れる。
次に、新しいスライドパッド基板を取り付ける。
先ほどと逆の手順で、ラッチが立った状態で新しいスライドパッド基板のフレキケーブルを差し込み、奥までしっかりケーブルが入ったらピンセット先端でラッチを倒す。


これでスライドパッド基板交換は完了だ。
■スライドパッドの交換
スライドパッド交換にあたって、まず黒いドーナツ状のパーツを2個取り外す。
1つ目は固定されていないので、ピンセットで摘まんで簡単に取り出せる。

2個目のドーナツはスライドパッドの内側に入っているので、ピンセットで切れ目のあるところを摘まんで、スライドパッドのスリット部分から引っ張り出した後にクルンと回すようにして取り外す。

(写真撮影を忘れたので、New3DSの写真です)
次に、スライドパッドを外す。
写真のようにスリット部分を本体フレーム部分に引っ掛かるようにした状態にして、スライドパッドをくるっと回せば外れる。


新しいスライドパッドを取り付ける前に、スライドパッドが収納されていた箇所の掃除を行う。
削れたプラスチックやホコリなどでかなり汚れているので、精密綿棒で念入りに清掃する。
あわせて、本体と裏フタの隙間もかなり汚れているので、精密綿棒で掃除しておいた方がいい。
機械を清掃する際は、無水エタノールを付けた綿棒の使用がオススメだ。
(できれば水は使わない方がいい)
新しいスライドパッドの取付は、先ほどと逆の手順になるので簡単に説明する。
スライドパッドは外す時と同様、スリット部分を本体フレームに引っかけるようにした状態でクルッと回して取付できる。
次に、切れ目の入ったドーナツ状パーツも同様に、ピンセットで切れ目のある部分からスリット部分を通してクルッと回せば取付可能だ。
切れ目ドーナツを取り付ける際、スライドパッドがグラグラ揺れると取付に苦労するので、あらかじめ厚紙やティッシュを上下画面で挟み込むようにして折りたたむとスライドパッドが動かなくなり作業しやすくなる。

最後に、スライドパッド基板とドッキングさせる。
スライドパッドの位置を中央にセットして、楕円形の穴の形状が縦になるようにセットしてからもう1つのドーナツを置く。
スライドパッドは穴の形状が楕円形になっているため、穴の位置と形状が合っていないと取付できない構造になっているので要注意だ。

基板とスライドパッドが付いたら、一旦スライドパッド基板のネジを締めてスティックを動かしてみて手ごたえがあるか確認する。
穴の位置がズレてスティックのパーツが噛み合っていない状態だと、スティックの感触がスカスカで、スティックを離してもセンター位置に戻らないので、もしそのような状態になった時はスライドパッド基板を持ち上げて再度位置を合わせて直す。

■動作確認+スライドパッド調整
まだ裏フタは締めない状態でスライドパッド基板が動作するか確認する。
(スピーカーケーブルを外しているので音は出ない)
先ほど取り付けたスライドパッド基板のフレキケーブルがズレていたり接触不良を起こしていると、スライドパッド入力が無反応だったりカーソルが暴走したりするため、ここで一旦動作チェックを行う。
(社外品パーツのため不良品の可能性もある)
電源は下の写真の矢印部分を長押しするとONになる。

メニュー画面でスライドパッドの動作確認が取れたら、一度設定画面に入ってスライドパッドの調整を行う。

写真のようにスライドパッドを倒して4つとも△が▲になるのを確認できたら問題無しだ。


設定画面を抜け、再び電源ボタンを長押しで電源メニューを出して電源をOFFにする。

■裏フタの取付
ここまで動作するのを確認出来たら、最後に裏フタを取り付ける。
先ほど外した3か所のケーブルを取り付ける作業については、特に部品の構造上は難しくない筈だが、とにかく隙間が狭いため取り付けづらいのが難点だ。
まず背面カメラケーブルを取り付ける。
ラッチが立っているのを確認し、ケーブルを奥まで差し込んでからラッチを寝かしてケーブルを固定する。

次にスピーカーケーブル(L/R)を取り付ける。
こちらはコネクタを垂直に差し込むだけだが、狭いスペースでの作業のため苦戦しがちた。

ケーブルが繋がったら、音量ボリュームパーツをメイン基板の音量の突起部分に掛かるようにセットする。

次に裏フタを音量ボリュームのパーツに”被せるように”取り付け、先にボリュームスライダーの穴を通すように蓋を締めてから、他の部分をはめ込むようにして裏フタを取り付ける。
ここがクセの強い部分で、基板側の黒い突起とスライダーが噛み合っていない状態でボディを付けようとすると、基板側の突起が折れてしまって音量調整が出来なくなるので、慎重に作業しよう。

なお、過去にボリュームの折れた突起を修理したことあるが、正直耐久性に不安が残る……?
【修理解説】Newニンテンドー2DSLLの音量ボリュームの部品が壊れて調整できないので分解修理してみた
ボディを取り付けるタイミングでスライダーと突起の位置がズレてしまうおそれもあるので、実に厄介な部分だ。
最後にYネジ4本を閉めて作業完了だ。

■最後に(やはりnew2DSLLは好きになれない)
修理を終えて思ったことは、やはり歴代3DSシリーズの中でもメンテナンスしづらいNew2DSLLだけあって、裏蓋を外す開腹作業に手間がかかる構造をしているなという印象だった。
しかし、スライドパッド交換作業そのものは従来機と変わらず比較的簡単な作業のため、裏フタさえ何とかできるようになれば自力で修理することは可能そうだ。
しかし、裏フタの取り外しにくいといういやらしい構造もアレだったが、基板の構造がNew3DSシリーズのように各機能のユニット化した流れに反して、New2DSLLは殆どの機能をメイン基板にハンダ直付けタイプの旧来のメンテナンスし辛い構造に逆戻りしているのは一体どうしたものかと……?


上の写真1つ目はNew3DSLLの基板の映像だが、故障しやすいカートリッジスロットやSDカードスロット、十字キーなどのパーツが各々のユニットに分かれていてメイン基板にフレキケーブルで接続するタイプとなっていて、修理の際にユニット単位で交換できるためメンテナンス性が高くなっている。

(カートリッジスロット交換は軽く死ねますね)
実際、New3DSLLの故障した十字キーの修理をした時も、十字キーのユニット交換だけで比較的簡単に修理することができた経験があり、「これはナイス改良だ、任天堂!」と京都に向かってサムズアップした程だ。
【修理解説】Newニンテンドー3DSLLの十字キーが効かないので、分解してパーツ交換修理してみた
おそらく、これまで3DSシリーズで問題となっていた故障しやすいパーツ交換修理のサポート側からの意見をフィードバックした結果、改良されたのではないかと思う。
そんな3DSシリーズのライフサイクルの中で様々な改良が施され、シリーズ最後にリリースされたNew2DSLLは一体どういう構造になっているのかと思ったら、まさかのメインボードにほぼオールインワンという先祖返り仕様となっていて、これには任天堂修理サポートセンターもさぞご立腹だったに違いない(多分)。
この1ボード全機能入り構造は製造面でコストダウンになるのかもしれないが、旧3DSシリーズ同様にパーツ単位での交換が難しく、修理サポート側では部分的な故障でもメインボードごとの交換となってしまい、かえってサポートコストが増大するのではないかと思われる。
さらに、new2DSLLは消耗頻度の高いバッテリー交換作業すら3DSシリーズ屈指の難易度を誇り、先ほどのように裏フタを苦労して外さないとバッテリーにすらアクセスできないという鬼仕様は、子供ユーザーにとっては交換難易度の高い致命的な構造だ。
バッテリーが消耗してダメになったからと言ってメーカー修理に出さないといけない最悪のメンテナンス性の構造から、「New2DSLLは使い捨て品かよ!」と邪推したくなるほどだ。
そして、先日とうとうメーカーの修理サポートも打ち切りとなってしまったのは本当に痛い話だ。
分解してあらためて「やっぱNew2DSLLの設計思想、嫌いだわ」と思ってしまったが、内部の構造に目をつぶって3DSシリーズのゲーム機として使ってみると、軽量で画面も大きく見やすいため、悔しいが魅力も多いハードだ。

このように普通に使うだけならNew2DSLLも悪くはないゲーム機だと思うが、バッテリー交換すら簡単に出来ない厄介なハードに対して、メーカー修理サポートを7年ちょっとで打ち切ってしまうのは少々早すぎなのではないかと思う。
(New2DSLL:2017年10月発売)
せめてバッテリー交換サポートくらいは継続して欲しいところだが……。
そして、先ほど祈りながら取り付けたカメラケーブルだが、結局ケーブル接点を清掃してもエラーが出て直らなかったし、困ったもんだ……。
